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老犬が食べない。「食欲がない」か「食べられない」かを分ける

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シニア犬がごはんを残すときは、フードの好みだけでなく、口の痛み、姿勢、吐き気などが関係する場合があります。フードを替える前に、食欲自体が落ちているのか、食べたいのに食べにくそうなのかを観察してください。

においを嗅ぐだけで口をつけない、何を出しても食べない場合は、食欲そのものが落ちている可能性があります。手からなら食べる、体を支えると食べる場合は、姿勢や口の状態も確認します。嘔吐、下痢、呼吸の変化、ぐったりしている様子があれば、早めに動物病院へ相談してください。

食欲がないのか、食べにくいのかを分ける

同じ「食べない」でも、原因が意思の側にあるのか体の側にあるのかで、対応は正反対になります。食欲が落ちているなら、においや温めへの反応を見ます。食べられないだけなら、姿勢・食器・フードの硬さを見直します。判断の材料は、特別な道具がなくても「何をどう食べるか」を観察するだけで、けっこう集まります。

手からなら食べる/立てないと食べない、はフードの問題ではない

手を近づけると食べる、体を支えると食べる。これは食べる意思がある証拠です。食欲はあるのに、姿勢や口・のどの機能が追いついていない状態と考えられます。このときフードの味や香りを変えても、食べにくさそのものは残りやすいのです。

歯がぐらつく、噛む力が弱い、うまく飲み込めない。こうした体の側の問題は、嗜好性を上げるだけでは埋まりません。だから最初にやるのは、フード選びではなく食べ方の調整になります。

においを嗅ぐが口をつけない・何を出しても食べないは「食欲そのもの」の低下

嗅ぐのに食べない、好物にも反応しない。これは食欲そのものが落ちているサインです。加齢で味覚や嗅覚がにぶり、食への関心が下がることがあります(※1、※2)。消化機能や内臓の働きが落ちて、食欲に影響することもあります。

気をつけたいのは、食欲不振が内臓疾患や腫瘍まで、原因の幅がとても広い症状だということです(※3)。何を出しても食べないときは、老化と決めつけずに受診を検討してください。

シニアが食べなくなる背景は成犬と違う

成犬で食べない理由の多くが偏食なのに対して、シニアは体の衰えが絡んできます。味覚・嗅覚だけでなく、歯・顎・のどの機能も同時に落ちていきます。背景がいくつも重なるぶん、ひとつずつ切り分ける必要があります。

嗅覚・味覚・消化機能の低下、腎臓・肝臓機能の低下

加齢は、五感と内臓をいっしょに鈍らせます。味覚が変わり嗅覚が落ちると、以前は喜んだごはんに関心を示さなくなることがあります(※1)。唾液や胃腸の分泌も弱まって、消化の働き全般が落ちていきます。

腎臓や肝臓の働きも、年齢とともに低下します(※1)。内臓の不調が食欲に出ることもあるので、自己判断で放置しないでください。

歯周病・歯のぐらつき・脱落、顎の筋力低下

噛めないから食べない。これは食欲の問題ではなく、摂食の問題です。歯周病が進むと歯がぐらついて抜け、ごはんが食べづらくなります(※1)。硬いものを避ける、片側だけで噛む、食べこぼす——こんな様子が目印になります。

顎まわりの筋力も加齢で落ち、噛む力が弱くなっていきます(※1)。15歳を過ぎたハイシニアでは、顎の筋力が落ちて口を動かしづらくなることもあります(※4)。

嚥下力の低下によるむせ、誤嚥性肺炎のリスク

食事中によくむせるようになったら、飲み込む力が落ちてきているのかもしれません。嚥下力が低下すると、食べている最中にむせることが増えます(※2)。

誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液が誤って気管に入り、肺が炎症を起こす状態です。加齢による嚥下反射のにぶりと筋力低下が主な要因で、食事の姿勢や早食いも関わるとされています(※5)。食事中や食後の咳、速い呼吸が続くなら、早めに獣医師へ相談してください。

「食べたいのに食べられない」老犬に、家でできること

食べる意思があるなら、まず食べやすい姿勢と形にととのえるのが先です。高い位置の食器、支える姿勢、ふやかし、回数を分ける。順番に試せますし、どれも新しい道具をそろえる前に、いまある環境で調整できます。

食器を高さの合った位置に

ねらいは、首を下げずに食べられる高さにすることです。首の筋力が衰えると、下を向いたままの姿勢がつらくなります(※6)。肩の高さあたりに食事台を置くと、首を下げずに食べられます(※1)。

高さの数字そのものより、その子の体格や体調に合っているかが大事です(※7)。食べる様子を見ながら、少しずつ合わせていってください。

上半身を起こして支える。首を下げた姿勢は誤嚥のリスクになりうる

寝たまま、あるいは首を下げたままの食事は避けて、上半身を起こして支えます。不適切な食事姿勢は、誤嚥の要因のひとつに挙げられています(※5)。胸の下にクッションを入れる、体を軽く抱えるといった方法で支えられます。

飲み込む力が落ちた老犬ほど、姿勢の影響が出やすくなります。むせや咳が続くなら、支え方も含めて獣医師に相談してください。

ふやかす・とろみをつける

噛む力や飲み込む力が落ちた犬には、やわらかくして口にしやすくします。ドライフードをぬるま湯でふやかすと、硬さがやわらいで香りも立ちます。熱すぎるとやけどの危険があるので、人肌まで冷ましてから出してください。

とろみをつけると、口の中でまとまって飲み込みやすくなることがあります。どんな形状が合うかは個体差が大きいので、迷ったらかかりつけに聞くのが早いです。

1回量を減らして回数を分ける

一度に食べきれないなら、少量を複数回に分けます。消化機能が落ちたシニアは、まとめて食べると負担になりやすいものです。1回の量を減らして、その分こまめに出すと食べきりやすくなります。

1日の総量は変えないのが基本です。量やカロリーの配分に迷うときは、獣医師に相談して決めてください。

認知症が背景の「食べない」は別物として扱う

行動の変化をともなう「食べない」は、認知症が背景にあることがあります。認知機能不全症候群は、老化で認知機能が徐々に落ち、特徴的な行動障害が出る病態の総称です(※8)。食の問題として扱う前に、行動の変化を合わせて見ます。

昼夜逆転・旋回徘徊・不適切排泄などの症状

次のような行動の変化があれば、認知症の可能性も頭に入れてください。アニコム損保の解説では、代表的な症状として次が挙げられています(※8)。

これらは特に13歳以上の犬で多く見られるとされます(※8)。認知症では、食べ物の好みが突然変わることもあります(※1)。気になる行動があれば、フードを変える前に獣医師へ相談してください。

シニアは「様子見」の許容が短い。受診の目安ライン

シニアは体力の余裕が少なく、「もう少し様子を見る」の許容が成犬より短くなります。若い犬なら待てる時間でも、老犬では早めの受診が向いています。迷ったら待たずに相談、が結局は近道です。

全く食べない・嘔吐下痢・水分排泄の変化・呼吸の異常があれば受診

次のサインが出たら、食べない時間の長さに関わらず早めに受診してください。

全く食べ物を受け付けないときは、緊急性が高いことがあります(※2)。水分摂取や排泄の変化、嘔吐・下痢も、受診を判断する目印になります(※1)。咳や速い呼吸は、誤嚥に関わるサインとして早めの受診がすすめられています(※5)。

食べない時間だけで見る日数の目安は、病院によって幅があります。年齢や体格ごとの日数の目安は、偏食寄りの記事にくわしくまとめました。 → 食べない時間の目安と受診ラインはこちら

それでも「食べにくそう」が続くなら、食べやすさを設計したフードも選択肢

受診で大きな異常はなかった、姿勢も形状も整えた。それでも食べにくそうなら、フードの見直しも一手です。順番はあくまで、切り分けと家での工夫が先。それを終えたうえで、食べやすさを設計したフードを検討します。

見るのは硬さ・粒の大きさ・切り替えやすさの3点

シニア向けを選ぶなら、見る点は3つに絞れます。ひとつ目は、噛む力に合った硬さか。やわらかめか、ふやかしやすい設計かどうかです。ふたつ目は、口の小さい老犬でも食べやすい粒の大きさか。

みっつ目は、いまのフードに混ぜて少しずつ移行できるか。歯が抜けたり噛む力が弱ったりすると、硬いものを好まなくなる犬は多いです(※9)。この3点で二次情報を整理した記事を用意しました。 → シニアの食べやすさで選ぶフードを二次情報で整理した記事はこちら

よくある質問

Q. 手からなら食べるのは、わがままですか。 わがままとは限りません。食べる意思はあるのに、姿勢や口・のどの機能が追いついていないことがあります。食器の高さや姿勢の支えを整えると、食器から食べられる場合があります。それでも手からしか食べないなら、体の側の要因を獣医師に相談してください。

Q. 食べないうえ、水も飲みません。 食べず水も飲まない状態は、様子を見ずに早めに受診してください。シニアは体力の余裕が少なく、脱水が進みやすいためです。食べない時間の長さより、水を飲むか、元気があるかを優先して見ます。

Q. 急に食べなくなりました。老化ですか。 老化と決めつけないでください。食欲不振は、内臓疾患や腫瘍まで原因の幅が広い症状です(※3)。急な変化や、嘔吐・下痢・元気のなさをともなうなら、早めに獣医師へ相談してください。

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参考文献